2000年頃のことをインターネット黎明期と呼んでしまうと、それはそれで語弊があるのかもしれないのですが、当時は、インターネットの世界に参加する企業もまだまだ一般的ではなくて、ウェブは個人のフィールドだったんじゃないかな、と思います。

紙をパラパラめくりながら気になる「何か」を調べるという経験自体はとても楽しいものであるけれど、クリックすればそこに読みたいコンテンツがあるというワクワク感こそがインターネットの魅力であり、多くの人を惹きつけていました。

2000年2月に『初期のジャズ』を開設した際、自分がどこまで具体的に考えていたかは、はっきりとは覚えてはいませんが、ジャズ史に関する情報をウェブ上にアップロードし始めたのは、コンテンツとコンテンツがハイパーリンクで繋がるHTMLという文書形式によって、紙の百科事典には無い魅力を持ったエンターテインメントが作れることを期待したからだったように思います。

初期のジャズ』を訪れた方には、百科事典の記事を読む中で、気になったリンクをどんどんクリックしてもらい、知識の海を泳ぐような体験をしてもらえれば、それが一番私の提供したかったことなのですよね。


ジャズ草創期の音楽家たちは、ニューオリンズやシカゴ、ニューヨーク、カンサスシティ等の各地を移動しながら、共演したり離れたりを繰り返し、それぞれが影響を与え合ってきたわけで、こうした複雑な関係性を紙の本に書き表すことは簡単なことではありません。

下手に構造的な編集を加えると、まるで大河ドラマのような関係性の魅力が半減してしまうようにも思えるわけです。膨大な関係性をありのままにそこに配置することは、インターネットが得意とする領域ではないでしょうか。

ひとりひとりの演奏家たちの人生や夫々の関係性を表現することで、そこに姿を現すものこそが「ジャズの歴史」そのものなのではないか。それが『初期のジャズ』の思想です。


2000年当初は、メモ帳にHTMLを直接記述するところから始まったわけですが、更新作業効率化の手段として、MovableType、XOOPS、WordPressと様々なソフトウェアを導入(そして、廃止)し、CMSと言われるソフトウェアたちの歴史もリアルタイムで見てきました。

20周年を迎えた今年になり、(ウェブ上の百科事典の代名詞ともいうべき)Wikipediaでも採用されているmediawikiというソフトウェアを導入するに至りました。

文献の比較や調査には時間がかかるわけですが、ウェブ更新作業そのものは、mediawikiのおかげで省力化しました。『Encyclopedia of Early Jazz』ですが、2020年4月末から現在まで、日次での更新が継続できており、これは、『初期のジャズ』を開設した2000年2月以来、初めてのことです。

次の段階として、文献の検索&調査の効率化の方法はないか等と妄想している今日この頃です。


ともかく、『初期のジャズ』及び『Encyclopedia of Early Jazz』を訪問してくださった皆さまには、是非とも、気になるリンクは、どんどんクリックしてもらい、情報の海を泳ぐ楽しみを感じていただきたいと思う次第です。皆さまに楽しんでいただけるように、より一層記事を増やしていきたいですね。