ジャズ草創期の人物か?という点で「初期のジャズ」で取り上げるべきかどうかは迷うところではあるのですが、今回はジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)の初録音を紹介します。

ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)は、ロマ(ジプシー)出身のジャズギタリストで、ロマ音楽とスウィング・ジャズを融合させたようなスタイルのマヌーシュ・スウィング(ジプシー・スウィング)とも言われる独特の音楽を創り上げました。

幼少の頃から家族と共に欧州を旅していたというジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)ですが、1920年頃にはパリで暮らすようになっており、ギターやヴァイオリンを演奏していたと言われています。

10代後半の頃にキャラバンが火事になり、その火を消そうとして大火傷を負い、結果、左手の薬指と小指に麻痺が残り、医師からも二度とギターを演奏することはできないと診察されるのですよね。

ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)は、そのような事態にも諦めず、左手の人差し指と中指だけでフィンガリングする独自の奏法を確立し、ハンディキャップがあるとは信じられない技巧を凝らしたフレーズを繰り出すようになりました。

彼がギターを弾いている映像も現存しているのですが、指が不自由なことが感じられないような優雅な動きがなんというか驚異的です。

Django Reinhardt(1925年)

多くの名演を残しているジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)ですが、その初録音がこのハンディキャップを抱える前に吹き込まれていることはあまり知られていません。

1928年5月か6月にパリで録音されたと言われる「L’orchestre Alexander」名義で吹き込まれた”Parisette”で、ジャンゴ(Django)が弾いているのはバンジョーで、もう一人のモーリス・アレクサンダー(Maurice Alexander)のアコーディオンとのデュオになっています。

この時期に残されたジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)の演奏は、すべて(ジャズではなく)ミュゼットであり、楽器もギターではなく、バンジョーなのですよね。

後のマヌーシュ・スウィングのサウンドを期待していると肩透かしされた感じを受けるかもしれませんが、その優雅な雰囲気は後のジャンゴ(Django)の音楽にも通じるものがあり、これはこれで貴重な資料です。