最近の活動状況についてですが、ジャズ史の研究に専念するというわけにもいかなくなってきており、『初期のジャズ』および『Encyclopedia of Early Jazz』という2つのウェブサイトの運営に、もっと時間と労力を割きたいと思いつつも、現実には「働かずとも生活できる環境」が整わない限り、それも難しいな……と、つくづく感じているところです。
なお、私はこれらのサイトの運営者であることを、普段はあまり公にはしていないのですが、あるときトラディショナル・ジャズ界隈の集まりで、次のようなやり取りがありました。
某氏:「ジャズの初期って、ギターはあまり使われてなかったんだよね?」
私:「たしかに音量面ではバンジョーの方が重宝される傾向がありましたが、ギターや弦ベースも初期の段階から使われていましたよ。」
某氏:「いや、ジャズの始まりはマーチングバンドだから、弦ベースなんて使われてなかったはずだよ。」
私:「たしかにマーチングバンドも存在しましたが、当時からダンスバンドも活動していました。たとえば、John Robichauxのバンドの写真には弦ベースが写っていますし、一概には言えないと思いますよ。」
某氏:「いや、ダンスバンドって……ジャズの始まりはマーチングでしょ。」
残念ながら、あまり耳を傾けてもらえませんでした。ご年配の方ということもあり、長年の先入観を覆すのは容易ではないと理解しつつも、やはり少し寂しい気持ちになる出来事でした。
いずれ、19世紀末から1920年代にかけてのジャズ草創期における各楽器の使用実態について、あらためて記事としてまとめてみようと考えています。事実に基づいた情報をきちんと記録として残すことに、あらためて意義を感じた……そんな出来事でもありました。
そういえば、多くのアーリージャズ・ファンによるウェブサイトが閉鎖に追い込まれている昨今ですが、そんな中でも「こんな情報源があったのか!」という新たな発見がありましたので、ひとつ共有させてください。
PBS(Public Broadcasting Service)のウェブサイトでは、時折ジャズに関するドキュメンタリーが公開されています。中には初期ジャズに関する貴重な映像や解説もあり、新しい楽しみを見つけたような気分になりました。
特にお薦めなのは「The Music Makers of Gennett Records」というGennettレコードに関するドキュメンタリーです。
20世紀初頭、インディアナ州リッチモンドにある小さな録音スタジオが、ジャズ・エイジのサウンドトラックに大きな影響を与えました。『The Music Makers of Gennett Records』は、アメリカのジャズ、ブルース、カントリー、ゴスペル音楽の偉大なアーティストたちが初めて録音を行った、Gennett Recording Studios の知られざる物語を描いています。

実は少し前から、運営日記の note 出張版として「ジャズ史 編纂日誌」なるものを始めています。
ジャズ史の編纂に関わるあれこれ――情報源の紹介や、AIの活用についての話題など――は、今後そちらにまとめていく予定です。
一方で、この「本家」の方は、今回の記事のように、もう少し雑記的で自由な内容を中心にしていこうかなと考えています。
引き続き、お付き合いいただければ幸いです。